パーホーセルの消波原理
01消波ブロックの基本消波原理
一般的に前壁に適当な空隙率を持ち、1つの遊水部によって構成される消波ブロックの基本的原理は寄せ波時には前壁の抵抗により、一部は堤体前面に沿って水位が上昇します。残りは前壁の開口部を通って遊水部に流れ込みます。この時、遊水部内の水位は外の水位よりも遅れて上昇し前壁の前後には大きな水位差が出来ます。
続いて、引き波時には、前壁前面の水位は下降を始めますが、遊水部内の水は前壁の抵抗により直ちに流出することがないため、水位は外の水位よりも遅れて下降し、前壁の前後にはやはり水位差ができます。
この水位差によって、開口部を流出入する水が加速され強い噴流となり、多量のエネルギーが失われます。
このため、波のエネルギーの殆どが消滅し、消波作用が行われることになります。
このような構造による消波作用は、遊水部幅によって大きく変化し、一つの波長の波に対しては最大の消波効果を表す遊水幅が唯一つだけ存在(最適遊水幅)します。それより広いかまたは、狭い遊水幅においては、消波効果はかなり低下します。
逆に、一つの遊水幅の消波岸壁はそれに対応する唯一つの波長(最適波長)の波に対してだけ最大の消波効果を発揮し、それより長いかまたは、短い波長の波には充分な効果を示しません。
以上のように、遊水幅の決まった消波岸壁は対応する最適波長の波に対してだけ最大の消波効果を示すわけですから、それより短い波に対しては当然、効果は低下します。
02パーホーセルの消波原理
パーホーセルブロックの基本構造は、透過性をもつ補助壁を前壁と後壁の中間部に設けていることです。このことが波長の短い波に対して補助壁が不透過壁の役目を果たすようになり消波効果を最大に発揮する最適遊水部となり、第1遊水部だけで有効な消波効果を発揮します。
波長が長くなり、第1遊水部だけでの消波が困難になると前壁から後壁までが最適遊水部となり消波効果を発揮するようになります。ここが、パーホーセルの大きな特長です。
①~④はパーホーセル堤体内の消波状況の連続写真です。
波が堤体に作用し始めると堤体前面の水位は上昇し始め、遅れて第1遊水部、さらに遅れて第2遊水部の水位が上昇し始めます。遊水部内が満水状態となった後は、第1遊水部から外への流出が始まり遅れて第2遊水部の水が流出されます。
このようにパーホーセル構造では、前壁の大きな開口率(V=27%)と補助壁の小さな開口率(V=9%)の2つの作用により、波のエネルギーを損失させていることが分かります。
03斜め入射波の消波原理
極端な場合として、岸壁に平行に波が進行するときを考えてみます。
この場合、遊水部に隔壁がなければ波は遊水部の中をそのまま進行することになり、遊水部の消波機能は全く現れません。
しかし、これを多数の隔壁で仕切り、一つの仕切らせた遊水部を考えると、その前面では波が次々に通過するわけですから、それと共に水面が上昇または、下降を繰り返します。つまり波が直角に入射する時と類似の状態となって、遊水部が効果的に機能し、有効な消波効果を表すことになります。